JLPT N1 - MOCK1 READING
記憶は、過去の出来事をそのまま保存する忠実な記録媒体ではない。むしろ、絶えず「再構築」される動的なプロセスであると捉えるべきだ。我々は過去を思い出す際、現在の自己の価値観や知識というフィルターを通して、出来事を再解釈している。つまり、記憶とは、現在の自分にとって都合のいいように、あるいは意味のある形になるように、過去の断片を編集し、物語として再構成する作業なのである。この過程では、重要でないと判断された情報や、現在の自己像と矛盾する記憶は、意識的・無意識的にかかわらず淘汰されていく。忘却とは、単なる記憶の欠落ではなく、自己の物語を首尾一貫させるための能動的な取捨選択の一環なのだ。したがって、我々の自己同一性とは、過去の正確な記録の上に成り立つのではなく、我々が自らについて紡ぎ出す物語そのものにほかならないのである。

筆者によると、記憶と自己同一性との関係はどのようなものか。

💡 詳細解説

正解の選択肢は、本文の結論部分「我々の自己同一性とは、過去の正確な記録の上に成り立つのではなく、我々が自らについて紡ぎ出す物語そのものにほかならないのである」という記述と一致する。本文全体を通して、記憶が現在の自己によって「再構築」され、「取捨選択」されるプロセスであり、その結果として作られる「物語」が自己同一性を形成すると説明されている。 他の選択肢がなぜ間違いか: 1番目の選択肢は、本文の「記憶は…忠実な記録媒体ではない」という冒頭の主張と矛盾する。 2番目の選択肢は、「忘却とは…首尾一貫させるための能動的な取捨選択の一環」という記述に反し、忘却を否定的に捉えている。 3番目の選択肢は、「完全に捏造する」という表現が「再構築」「編集」という本文の趣旨から逸脱しており、「本質的なつながりはない」という点も、記憶から物語を紡ぎ出すことで自己同一性が形成されるという筆者の主張と正反対である。