JLPT N1 - MOCK2 READING
現代は「役に立つ」ことが至上の価値とされる時代である。教育は将来の職業に直結するスキルを授けるべきだとされ、研究は短期的に経済的利益を生み出すものが優先される。こうした風潮の中で、文学、哲学、歴史といった人文学や、すぐには応用先の見えない基礎科学は、「役に立たない学問」として軽んじられる傾向にある。しかし、社会の長期的発展という観点から見れば、この考えは極めて短絡的であると言わざるを得ない。 一見「役に立たない」知識の探求が、後に世界を根底から変える革新の種となる例は、歴史上枚挙に暇がない。例えば、19世紀の数学者たちが純粋な知的好奇心から研究していた抽象的な数学理論が、一世紀を経てコンピュータや通信技術の基礎を築いたように。彼らは目先の応用など考えていなかった。ただ真理を探究する中で、人類の新たな可能性の扉を開いたのである。短期的な実利のみを追求する社会は、こうした未来への大きな投資を自ら放棄しているに等しい。 さらに、人文学の価値は、直接的な生産性では測れない領域にある。多様な価値観に触れ、歴史の教訓に学び、人間の複雑な内面を洞察する。こうした営みを通じて培われる批判的思考力や共感力、大局的な視野は、変化の激しい現代社会を生き抜く上で不可欠な羅針盤となる。目先の利益や効率ばかりを追い求め、社会が均質化し、内省する力を失ったとき、我々はその進むべき方向を見失ってしまうだろう。 社会の健全な発展のためには、効率や実用性という尺度だけでなく、「知の多様性」というもう一つの尺度が必要不可欠だ。すぐには役に立たないかもしれないが、人類の知的地平を広げ、我々の精神を豊かにする学問。そうした「無用の用」とも言える知の領域を守り育てていくことこそ、未来の世代に対する我々の責務ではないだろうか。

筆者は、現代社会のどのような風潮を問題視しているか。

💡 Detailed Explanation

The author's central argument is a critique of the modern obsession with immediate, practical benefits ('役に立つこと'). The passage repeatedly contrasts short-term economic gains with the long-term, often unforeseeable, benefits of 'useless' knowledge in both basic sciences and the humanities. The correct answer accurately summarizes this core problem. Option 2 is incorrect because the author champions both humanities and basic sciences, not placing one above the other. Option 3 is a part of the author's concern, but it's a specific example (education) of the broader societal problem, which is the overvaluation of utility. The main point is the societal trend itself. Option 4 is not mentioned; the author uses historical examples of science, but doesn't claim historical knowledge itself is being underutilized in technology.