JLPT N1 - MOCK2 READING
Aの文章: デジタル技術の普及により、我々は膨大な情報に容易にアクセスできるようになった。スマートフォンや検索エンジンは、いわば「第二の脳」として機能し、我々の記憶を外部に保存する役割を担っている。この「記憶の外部化」は、一見すると認知的負荷を軽減する利点があるように思える。しかし、自らの脳で情報を記憶し、整理・統合するというプロセスを軽視する傾向を生む。知識が断片的な情報の集合体となり、それらを体系的に結びつけて新たな洞察を生み出すような、深い思考力が養われにくくなるという懸念が指摘されている。記憶とは単なる情報の貯蔵庫ではなく、思考の基盤である。その基盤が揺らぐことで、我々の知的能力そのものが変質してしまう危険性をはらんでいるのだ。 Bの文章: 情報を脳内に保持することへの固執は、時代遅れの考え方かもしれない。デジタルデバイスを記憶の補助装置として活用することは、人間の認知能力の拡張と捉えるべきだ。知識を暗記するという負担から解放されることで、我々の脳の認知的リソースは、より創造的で高次な思考活動、すなわち、情報の分析、評価、そして新たなアイデアの創出へと振り向けられる。重要なのは、個々の情報をすべて記憶することではなく、どの情報がどこにあるかを知り、必要な時に迅速にアクセスして活用する能力、いわば「メタ記憶」である。この新しい知のあり方は、複雑化する現代社会を生き抜くための適応的な進化の一形態であり、人間の知性の衰退ではなく、むしろその質の変化と捉えるのが妥当であろう。

AとBは、デジタル技術による「記憶の外部化」が人間の知的能力に与える影響について、どのように異なる見解を述べているか。

💡 詳細解説

正解は1です。 Aの文章では、「記憶とは…思考の基盤である。その基盤が揺らぐことで、我々の知的能力そのものが変質してしまう危険性をはらんでいる」と述べ、記憶の外部化が思考力の低下につながるという否定的な見解を示しています。一方、Bの文章では、「知識を暗記するという負担から解放されることで、我々の脳の認知的リソースは、より創造的で高次な思考活動へと振り向けられる」「人間の知性の衰退ではなく、むしろその質の変化」と述べ、記憶の外部化を知性の進化と捉える肯定的な見解を示しています。したがって、選択肢1が両者の対立点を最も正確に説明しています。 2:Aは情報アクセスの容易さがもたらす弊害を、Bはその利点を述べており、記述がAとBで逆になっています。 3:Bは「高次な思考活動」を重視しており、「断片的な知識を組み合わせる能力」だけを主張しているわけではありません。Aの主張は捉えていますが、Bの主張の核心を捉えきれていません。 4:「社会的な孤立」や「コミュニケーション」については、A、Bどちらの文章でも一切言及されていません。